
信州の東部に位置する八千穂高原へ通いはじめて20年あまりになる。白樺の美しい高原である。
冬期以外、年に3〜5回ほどキャンプで訪れている。

今年7月のキャンプで、顔見知りの地元の方から、「秋になると、それは美味しいりんごが出るからね」と情報をいただいた。特別の“りんご好き”というわけではないが、“それは美味しいりんご”というフレーズにしびれた。
9月のキャンプでは、“それは美味しいりんご”の時期を確認した。
「だいたい10月のなかばだけど、こればっかりは陽気まかせだから……」
それでもいい。10月の体育の日がらみの連休は八千穂高原でのキャンプがわが家の不動のスケジュールなのだから。
出かける寸前に台風18号が列島を襲った。幸いにして連休前に通り過ぎてくれたが、長野各地でりんごに被害があったと報道されて、いささかヤキモキしながらの出発だった。
高原の入口に位置する土産店に、果たして、りんごはたくさん並んでいた。たまたまだろうが、たくさんの観光客が見せの内外にいた。
ほかの品種のりんごはたくさんあるのに、目指す「シナノスイート」は一袋しか台の上にない。ひったくるようにして手に取った。店の奥さんが笑顔で「いらっしゃい」と出てきてくれた。
「間に合いましたね」と言いながら、シナノスイートの袋詰めを奥から出してきた。なんだ、あわてることはなかった。
奥のカウンターでは、シナノスイートを宅配便で送る手続きの列ができていた。みんな美味しいのを知っているらしい。
たしかに美味だった。ご近所へのおみやげのほか自分たち用に家に持ち帰った10個の大半が1週間しないうちに胃の中に納まった。

しかし、東京のスーパーや八百屋でもふんだんに売っているのを知ってショックを受けた。20〜30パーセントほど少々値は張るが、形はきれいだった。
八千穂のシナノスイート(写真上)は1個になってしまったので、昨日、行きつけの八百屋で4個買ってみた(写真右)。家に帰りつくとすぐに皮を剥いて食べてみた。
ひと口で、「あっ!」と声を上げたほどの違いがあった。それなりには美味しいけど、ジューシーさで八千穂産にまるでかなわない。
たった1個残った八千穂のりんごを、さてさて、いつ食べようか。来年まで会えないのだから、せいぜい心していただこうと思っている。
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